九州大学医学部第一外科 腎臓移植に関する情報 20070118

Key words: 腎不全、透析療法、血液透析、腹膜透析、移植、腎臓移植、生体腎移植、献腎移植、ドナー、レシピエント、免疫抑制、拒絶反応

腎臓と腎不全


腎臓は何をしているのですか?

腎臓は左右に1個ずつ、合計2個あり、背中側に位置しています。だいたい握りこぶしくらいの大きさで、 重さは120g前後です。
腎臓は血液を濾過して尿を作り、体外に排泄します。排尿することによって食事や飲水によって体に入る水分、 電解質、尿毒素を体の外に排泄しています。また必要な電解質や水分は再吸収することで、体を一定の環境に維持します。
このほかにも腎臓は血圧を維持するレニンというホルモンを分泌して血圧を維持します。
また造血ホルモンであるエリスロポエチンを分泌して、貧血を防いでいます。 また、ビタミンDを活性化して体内のカルシウムのバランスの維持し、骨を強くし、骨粗鬆症を防ぐ働きがあります。

腎不全とはどういうことですか?

充分な腎臓の機能が維持できなくなる状態を腎不全と言いますが、その原因、経過にはいろいろあります。
先天的な原因として低形成腎、膀胱尿管逆流、後部尿道弁、多発性嚢胞腎などがあげられます。
学校検診、職場検診で蛋白尿が指摘されてそれから20-30年経って慢性腎不全になる人があります。 これは慢性糸球体腎炎としてまとめて呼ばれますが、風邪から溶連菌感染をおこしたり、自己免疫疾患が原因で起こります。
年齢が高くなってからは、糖尿病、高血圧が原因で腎不全になる人が増えてきて、最近は糖尿病性腎症が透析導入の最も多い原因になっています。
腎動脈の血管病変、動脈硬化、繰り返す腎盂腎炎から腎不全になる人もいます。

腎不全になると。前述した腎臓の機能が障害された状態が徐々に起こってきます。
尿の生成、排泄、体内水分調整、老廃物の排泄ができなくなると、浮腫、高血圧、肺水腫、尿毒症、嘔気、嘔吐がおこり、 酸・電解質の調整がくずれると、酸血症、高カリウム血症、不整脈が起こります。
エリスロポイエチンが不足すると腎性貧血、ビタミンDの活性化ができないと低カルシウム血症、 くる病、骨異形性症候群、成長障害が起こります。

小児科や腎臓内科を訪ねると、検尿、血液検査、腎生検などを行って腎不全の進行具合を診断し、 おおくの場合は原疾患の治療、食事療法、生活指導、薬物療法が中心の内科的治療がただちに始まります。

治療の反応程度、進行具合には個人差がありますが、健康な腎機能の10%以下まで低下する(血清クレアチニンで8mg/dl程度) と末期腎不全といい、透析や移植が必要な状態となります。

腎不全に対する治療法は何がありますか?

腎不全に対する治療法を下図(腎不全に対する内科的治療)にまとめました。

腎不全に対する内科的治療

腎不全と透析療法

透析療法とはどういうものですか?

血清クレアチニンが8mg/dl以上(あるいは腎機能が10%以下)となり、内科的治療でコントロールできないような所見、 症状があれば、自分の腎臓の替わりとなる治療が必要となってきます。
それには腎臓機能のうち、水・電解質・尿毒素を除去する 透析療法と腎臓機能のほとんどを代償する腎臓移植の2通りがあります。
人工的に体の血液を浄化する透析療法が導入されれば、生命を維持することができるため、日常生活が可能になります。

しかし、透析療法は腎機能を回復させる治療法ではないので生涯継続する必要があり、長く続けていると合併症が生じます。
透析療法には血液を透析器に通して浄化してから体内に戻す血液透析と、お腹にカテーテルという管を入れて、 それを通して透析液を出し入れすることで血液を浄化する腹膜透析の2種類があります。

血液透析の方法

血液透析はどのようにして行いますか。

九州大学では、腎臓内科と第1外科を母体にして作られ、初期の腎機能低下から透析、腎移植を含めた腎疾患全般を扱う腎疾患治療部があります。
腎臓内科は、末期腎不全の内科的治療、院内や院外の紹介患者の緊急透析、血液透析導入、腹膜透析、腎生検とその診断、 腎移植前後の管理まで広く行っています。 ここで透析導入を受けた患者さんは、住居の近くの透析クリニックを紹介してもらい、通常は1日4〜5時間、週3回の維持透析を受けるようになります。
血液透析の方法は、腕に作られたシャント(前腕の動脈と静脈を吻合してつくります。場合によっては人工血管を用いることもあります)に針を刺しポンプを使って血液を体の外に取り出し、 透析器(ダイアライザー)に循環させ尿毒素、水分を除去した後、体内に戻します。透析器(ダイアライザー)は細い管状の透析膜を約1万本束ねたもので管の中を血液が流れ、 その周囲には透析液が流れています。透析膜の小さな穴を通して老廃物、水分、塩分などが透析液に移動します。こうして不要なものを除去し浄化された血液は体外循環を通って体内に戻ります。

腹膜透析はどのようにして行いますか。

腹膜透析は自分 (あるいは家族) で、主に自宅で行う透析です。
血液透析では血液を体外に取り出して血液の浄化を行いますが、 腹膜透析では腹腔内に直接透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の尿毒素、老廃物、水分や塩分が透析液に移動します。
十分に移動した時点で透析液を体外に取り出すことにより血液がきれいになります。

透析液の交換は自分で行いますが、 透析液は外気に触れることはなく透析液のバッグを交換することができます。腹膜透析液の交換は通常1日4回行われ、1回の交換時間は約30分です。 日中の交換をなくし、夜間就寝中に機械を使って透析液の交換を行うシステムもあります。一方、透析バッグの付け替えは一般的には手動で行われますが、 高齢者や視力障害者、手の運動障害者に対しては機械を使用して、バッグの付け替えと殺菌を自動的に行う方法もあります。
現在は、バクスター、テルモ、フレゼニウスなどの会社が取り扱っています。

透析療法の合併症を教えて下さい。

1. 不均衡症候群
透析導入期に頻度の高い副作用です。症状は透析中から透析終了後12時間以内に起こる頭痛・吐き気・嘔吐などであり、不均衡症候群と呼ばれています。
透析により血液中の尿毒素は除去されますが、尿毒素が除去されにくい脳との間に濃度差が生じます。濃度の高い脳は周囲から水分を吸い取りはれぼったくなることが原因とされています。 不均衡症候群は透析に慣れれば起こりにくくなります。

2. 血圧低下
間歇的治療(1回/2?3日)により体内にたまった水分を除去しなければならない血液透析療法の宿命であり、程度の差はありますが最も頻度の高い合併症といえます。
特に血圧低下を来しやすい状況として高齢、糖尿病、低栄養、貧血、心機能障害があげられます。 自覚症状としてはあくび,吐き気,嘔吐,頭痛,動悸,冷汗などがみられます。除水による循環血液量の減少に加え血管収縮能の低下、心機能障害が原因とされています。

3. 筋痙攣
血液透析中に足がつったり、筋肉がこわばったりすることがあります。
透析導入期や大量あるいは急速な除水を行ったときに生じることが多く、不均衡症候群や血圧低下と共通の原因で起こると考えられています。

4. 不整脈
血液透析中に脈が乱れたり、胸がどきどきするなどの症状をきたしたりすることがあります。
心臓病の合併に加え急速な除水による循環血液量の減少、透析による電解質(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)の急激な変化によって不整脈が発生しやすくなります。

5. 貧血
貧血は透析を行っている患者さんのほとんど全員にみられ、疲れやすい,動悸,息切れ,めまいなどの症状を来します。
腎臓から分泌される造血ホルモンであるエリスロポエチンが十分に分泌されないこと,尿毒素により赤血球の寿命が短くなることにより起こります。 また腎不全の状態では腸管からの鉄分の吸収が悪く,透析の操作や採血などにより鉄分が不足し鉄欠乏性貧血も加わります。

6. 腎性骨異栄養症
腎不全を原因とした骨の病気の総称です。腎不全の状態ではビタミンDの活性化に障害を起こすため低カルシウム血症となります。
また腎不全であるため腎臓からのリンの排泄低下となり,副甲状腺ホルモンの分泌を刺激します。 副甲状腺ホルモンは骨に作用して骨からカルシウムを動員しカルシウム値を正常に保とうとします。 このため骨はうすくなり,もろくなったり,骨折しやすくなったり,骨・関節痛がでてきます。
この状態を二次性副甲状腺機能亢進症と言います。一方、高齢者、糖尿病患者、低活動者では副甲状腺ホルモンの分泌不足を来すことがあります。 この場合にも骨が弱くなり骨折の頻度が多くなるとされています。また腎不全ではアルミニウムが骨に蓄積することもあり、骨折や骨の痛みを来します。

7. 透析アミロイド症
透析期間が長くなると、透析では十分な除去が困難であるβ2ミクログロブリンとよばれるタンパク質から形成される アミロイドという物質が全身のいろいろな部位に沈着して起こります。
アミロイド物質が手首の腱などに沈着し, 神経を圧迫するために手指のしびれや疼痛が起こる手根管症候群、指を曲げる腱に沈着し、 指がなめらかに伸びないバネ指、骨・関節に沈着して骨嚢胞ができたり、破壊性脊椎関節症などがあります。

8. 動脈硬化症
動脈の内側にコレステロールやカルシウムなどがたまり、血管が細くなって血液が通りにくい状態を動脈硬化症といいます。
透析を受けているひとは,高血圧,高脂血症,カルシウム代謝異常などが重なり,動脈硬化を起こしやすくなります。 脳の血管に起こると脳梗塞、脳出血の原因となり、心臓では狭心症、心筋梗塞、下肢の動脈がつまってくると足先のしびれ、 壊死、歩くと痛くなる間欠性跛行、網膜の血管が細くなると眼底出血、視力障害が起こります。
また、腸へいく動脈が細くなると虚血性腸炎を起こして透析時に腹痛が起こったり、血便が出たりします。

9. 高血圧、肺水腫
腎不全の高血圧のほとんどは水分や塩分の取り過ぎが原因で、これがひどくなると肺に水がたまる肺水腫を引き起こします。
肺水腫の症状は,むくみ,咳・痰,呼吸困難で,ひどくなると命にも影響してきます。 また,血圧が高い状態が続くと脳出血や心不全などを引き起こします。

10. 悪性腫瘍
長期に透析を行っている人では悪性腫瘍の発生率が高いと言われています。
特に腎癌の他,胃癌や大腸癌などの消化器系の悪性腫瘍が多く見られます。 腎不全による発癌物質の蓄積や免疫力の低下が原因とされています。 悪性腫瘍は早期発見,早期治療が原則であり,これらにより治癒も可能です。
したがって,早期発見のためには腹部CTや胃透視,胃内視鏡,便潜血検査などを定期的に行うことが重要です。

11. 感染症
腎不全では一般に感染に対する抵抗力が低下しており,感染症にかかる率が高くなります。
シャント部の感染や,尿路感染症,かぜをこじらせて起こる肺炎、肝炎などがあります。 また,結核にかかる率もかなり高いと言われています。感染予防には,体や衣服の清潔,十分な透析, うがいや手洗いの励行,十分な栄養,体力をつけることが重要です。

12. かゆみ
透析中,透析後,就寝時などにかゆみが増強されます。
原因は尿毒素やカルシウムが皮膚に沈着すること,汗が出にくく皮膚が乾燥すること,薬物の影響やアレルギ−などとされています。

腹膜透析特有の合併症は?

1. 腹膜炎
最も重要な合併症です。おなかが痛くなる,排液が濁る,熱が出るなどの症状がでます。病原菌が腹腔内に入ることによって起こります。腹膜炎はバッグ交換時の不潔な操作などによって起こります。これをくり返すと腹膜の機能が低下し腹膜透析が出来なくなります。

2. カテ−テル出口部・皮下トンネル感染
カテ−テル出口部から膿がでたり,肉の盛り上がり(肉芽)ができたり,カテ−テルのトンネルにそって痛みがでたりします。カテ−テルの出口や皮下トンネル部に病原菌が入ることによって起こります。カテ−テルの出口部付近を常に清潔を保つことが重要です。

3. カテ−テルの機能不全
腹膜透析液の注排液に時間がかかったり,十分量がでなかったりといった排液不良を起こします。カテ−テルの先端の位置が悪い時、カテーテル内にフィブリン塊がつまった時、カテーテルに大網が巻き付いたとき、カテーテルのよじれたときに起こります。

4. 被嚢性腹膜硬化症
腹膜の癒着によって腸管が動かなくなり,嘔気,嘔吐,腹痛,便秘などの消化器症状が現れます。高濃度のブドウ糖透析液や酸性透析液の長期使用、難治性腹膜炎が原因とされています。腹膜透析をすぐに中断する必要があります。


透析療法と腎移植の長所と短所を教えて下さい。

 

以下の一覧表に血液透析、腹膜透析、腎移植の長所と短所をまとめましたので、参考にしてください。

血液透析

腹膜透析

腎移植

医療を受ける機会 無条件、いつでも、だれでも受けられる ドナーが必要、生体腎移植はドナーに負担をかける、死体腎移植はドナーが少なく、いつ受けられるか不明
医療を受けている人 毎年3万人が新規透析導入、透析患者総数は毎年1万人ずつ増加し、 2005年末で25万人を超える 年間 1000例弱、死体腎移増えていない
医療を受ける際の意識 導入は医師の指示による
開始後は日常的な医療となる
自分の意思で決定
大きな決断を要する非日常的医療
入院・手術のリスク、肉体的精神的負担
(レシピエント、ドナーとも)
継続性 最長 35年以上
20年以上透析者も多数いるが10年生存率は約40%
移植された腎臓がだめになる可能性あり。その場合透析に戻る。
腎機能 悪いまま
(貧血・骨代謝異常・アミロイド沈着・動脈硬化・低栄養などの問題は十分な解決ができない)
かなり正常に近い
必要な薬剤 慢性腎不全の諸問題(貧血・骨代謝異常・高血圧など)に対する薬剤 免疫抑制薬とその副作用に対する薬剤
生存予後 移植に比べ悪い 優れている
心筋梗塞・心不全・脳梗塞の合併 多い 透析に比べ少ない
生活の質 移植に比べ悪い 優れている
生活の制約 多い
(週に3回、1回4時間程度の通院治療)
やや多い
(透析液交換・装置のセットアップの手間)
定期的通院
社会復帰率 低い 高い
食事・飲水の制限 多い
蛋白・水・塩分・カリウム・リン
やや多い
水・塩分・リン
少ない
手術の内容 ブラッドアクセス
(小手術・局所麻酔)
腹膜カテーテル挿入
(中規模手術)

腎移植術
(大規模手術・全身麻酔)

通院回数 週3回 月に1 -2度程度 移植後 1年以降は月に1度
旅行・出張 制限あり
(通院透析施設の確保予約が必要)
制限あり
(透析液・装置の準備 運搬・配送が必要)
自由
(免疫抑制剤を持参し服用)
スポーツ 自由 腹圧がかからない様に 移植部保護以外自由
妊娠・出産 ほぼ不可能 ほぼ不可能 腎機能良好なら可能
感染に対する注意 必要 やや必要 重要
入浴 透析後はシャワーが望ましい カテーテルの保護必要 問題ない
その他のメリット 医学的ケアが常に提供される
最も日本で確立した治療方法
血液透析にくらべ自由度が高い 透析による束縛からの
精神的・肉体的解放
その他のデメリット ブラッドアクセスの問題
(閉塞・感染・出血・穿刺痛
ブラッドアクセス作成困難)
除水による血圧低下
腹部症状(お腹が張る等)
カテーテル感染・異常
腹膜炎の可能性
蛋白の透析液への喪失
腹膜の透析膜としての寿命がある( 10年位)
免疫抑制剤の副作用
拒絶反応などによる腎機能障害・透析再導入の可能性
移植腎喪失への不安
Transplant Communication より改変

腎移植を受ける前に

腎移植とはどんな治療法ですか?

腎臓移植は末期腎不全で透析が近々必要か、現在行なっている人を対象に、提供された腎臓を移植し、腎臓の機能をほぼ正常に近くまで回復させる治療方法です。
提供をうける腎臓は1つですが、1つの健康な腎臓でも日常生活には全く支障がありません。 提供をして頂く方をドナー、提供を受ける側(腎不全の患者さん)をレシピエントと呼びます。 レシピエントは腎機能の改善により、ほぼ健康な人と同様な生活を送ることが可能となり、社会復帰の達成や生活・食事の制限が緩和されます。
又、透析から解放されるという精神的な解放感が得られますし、女性では条件を満たせば妊娠・出産も可能です。 また、ドナーも1腎になったとしても、健康に留意した生活をしていれば、20-30年は問題はないと海外では報告されています。

腎移植にはどのような種類がありますか?

 

腎臓移植には家族・配偶者・近親者から2つの腎臓のうちの1つの提供を受ける生体腎移植と、 脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける献腎移植(死体腎移植)の2種類があります。
生体腎移植には血液型に着目したABO血液型一致、血液型不一致、血液型不適合移植があります。
献腎移植では血液型は一致していますので、ドナーの状態により脳死下献腎移植、心停止下献腎移植に分類されます。

  生体腎移植は献腎移植に比べ、移植する腎臓の状態が良いので、腎の生着率(移植した腎臓の機能が良好で透析が必要のない割合)が高 いという利点があります。又、計画的な手術なので、医学的にも精神的にも準備が整った状態で移植を受けることができます。 ただ、健康であるドナーとなる人がいることが前提です。
一方、献腎移植では亡くなった方から腎臓を頂くため、健康な方にメスを入れることはありませんが、日本ではドナーの数が非常に少ないため、何年待っても受けられないということもあります。

腎移植の現状はどうなっていますか?

腎移植の現状を日本全体と九大の場合に分けて述べます。
2005年末現在、257,765人(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」)が透析療法を受けており、 毎年増加傾向にあります(下図:わが国の透析患者,移植登録患者,腎移植者数の推移)。
腎移植を受けた人は2005年には994名でした。その内、834名は生体腎移植で残りの160名が献腎移植でした。
献腎移植の登録者は11,564人(2006年8月31日現在)ですので、年間約1%の人しか献腎移植を受けられていないこと、 また待機日数の長い高齢者の割合が多くなってきているのが現状です。
一方で、海外全体では年間30万件弱の腎移植が行なわれており、 例えば米国では年間12,000件程度でその半数以上が献腎移植です。このように海外では移植医療は珍しい治療ではありません。

わが国の透析患者,移植登録患者,腎移植者数の推移

腎移植の成績は、生存率(レシピエントが生存している割合)と生着率(移植腎が機能して透析がいらない割合)で表します。
臓器移植ファクトブック2006によると、全国で2001年までに施行された腎移植のうち、追跡可能であった12,350症例について2003年に調査が行われ、 2005年に解析結果が発表されています。(下図:生体腎移植,献腎移植の生存率)
生体腎移植の生存率は1年95%、5年90%、10年84%、15年78%です。また、献腎移植の生存率は1年91%、5年84%、 10年77%、15年71%ですので、生体腎移植よりも5-10%劣るといえます。

生体腎移植,献腎移植の生存率

免疫抑制剤の進歩とともに、腎移植の生着率は年代を追うごとに向上しています(下図:生体腎移植の生着率)。
1992年から2001年に行われた3,889例の生体腎移植の生着率は、1年94.4%、5年83.4%、10年69.6%でした。
また、同時期の献腎移植1,520例の生着率は、1年85.7%、5年69.2%、10年54.3%で、生体腎移植よりも約10%下回ると思われます。

最近の腎移植は生体腎、献腎ともにさらに生着率が改善しています。このように、腎移植はいったん受ければ、一生OKというわけでなく、 5年で2割、10年で4割の人が透析の再導入が必要となっています。しかし、それでも、腎移植を受けて良かったと思う人が多いのは事実です。

生体腎移植の生着率
献腎移植の生着率

日本の腎移植の特徴は、人口や提供数、移植数に比べて移植施設が極めて多いということがあげられます。
日本臨床腎移植学会・腎移植臨床登録集計報告(2006)の報告によると、2004年、2005年の腎移植実施施設は、それぞれ126施設、121施設でした。
このうち、年間20例以上施行した施設は全国で13施設(全体の10.7%)しかなく、この13施設で458例(全体の46.2%)が行われています。
腎移植が一般医療として普及していくためには、提供数、移植数がもっと増えて、1施設あたりの症例数が増えていくことが必要です。

腎移植施設別件数
2005年 施設別腎移植実施数

九大では、1966年に第1例目を施行していますが、近年まで年間数例でした。
2000年ごろから年々増えて、2006年12月末現在の累計は、膵あるいは膵腎同時移植の13例を含めて174例となりました。2006年の1年間では43例の腎移植を行っています(図)。

当科の生体腎移植に関する特徴は、
 1.ABO不適合腎移植が12例、
 2.小児腎移植が10例、
 3.内視鏡を用いた生体ドナー腎摘出が85例
と増えたことがあげられます。
これは、手術手技、術前・術後管理、免疫抑制療法のめざましい進歩によるもので、数年前と比べると隔世の感があります。
脳死あるいは心停止ドナーからの臓器提供は依然として少ないままです。 12月中旬に臓器移植法施行後、脳死ドナーから50例目の多臓器移植が行われたにすぎません。

福岡県では、4年前から展開してきた心停止下献腎提供運動がしだいに実を結び、献腎移植は近年増加しています。 2006年10月14日の読売新聞調査よると2003〜2006年までの当科における献腎移植総数は31例と紹介されました。
1997年以降に当科で施行した腎移植症例の移植成績は、搬送された腎臓を移植したが全く機能せずに4日目に摘出した人と、 免疫抑制剤を長期に服用しないで拒絶反応がおこり移植腎が機能しなくなった2人が透析再導入になりましたが、 その他のレシピエントは今のところ透析を受けないで社会復帰しています。

他施設で腎移植を受けた維持期の患者さんも数多く通院されています。
転勤、転居の関係で当科を紹介されたり、ご自分の意思で転院を希望されたかたもあります。
九大では、腎疾患治療部として外科、内科がそれぞれの視点から移植後患者の管理をして、 できるだけ移植腎を長持ちさせ、人生を享受してもらうように努力しています。


このように、社会のニーズに応えるためには当科だけでできるものではありません。
小児腎移植患者は小児科腎疾患グループと共同で検査・治療を行い、 発育、就学といった成人とは異なるケアも必要です。 泌尿器科疾患や合併症があるときは、泌尿器科に連携をお願いしています。
献腎移植で緊急入院するときの循環器検査、レントゲン検査も循環器内科、放射線科の協力でスムーズに流れます。 緊急透析が必要なときは腎臓内科、二次移植やFlowPRAが高値の免疫学的ハイリスクなひとは遺伝子・細胞療法部に緊急で血漿交換をしてもらえます。
このような予想しうる危険とそれに対する手段をすみやかに講じたうえで、 手術部・麻酔科には少しでも虚血時間が短縮できるように緊急手術に対応してもらっています。
緊急受診を受ける救命救急センター、緊急入院に準備する看護部、ICU、無菌室病棟の対応も迅速でいつも感謝しています。
また、2006年から設置された院内コーディネーターは九大病院で行うあらゆる移植医療に従事して、 患者さんや家族のインフォームド・コンセント、支援になくてはならない存在となっています。
事務連絡、病院警備、外来者対応については、事務部がただちに実施本部を立ち上げて、 院内マニュアルに基づいて調整してもらえます。移植に伴う摘出費用、医療費、 可能な保険制度などは移植医療を扱う事務官がいて、患者さんの相談に応じています。九大で行っている腎移植や膵移植の現状を語るとき、 このように多くの人々、部署、専門家の協力で、その結果がもたらされていることを私たちは深く感謝しています。

腎移植は誰でも受けることができるのですか?

年齢は65歳までをいちおうの目安としていますが、基本的には全身麻酔の手術が受けられる心臓と肺を中心とした全身状態が良好であれば問題ありません。
しかし、移植後に免疫抑制剤を飲むことにより生じるリスクが致命的な問題をなりそうな場合は受けることができません。
例えば、治癒していない、あるいは治療後間もない悪性腫瘍(癌、肉腫、リンパ腫、白血病など)のレシピエントは 移植後に再発・転移を誘発する可能性があります。
結核や足の壊疽、慢性副鼻腔炎、活動性肝炎などの感染症も移植後に全身播種、敗血症など致命的な合併症を引き起こす可能性があります。
性格や気質、精神疾患によって服薬・通院などの自己管理が出来ない人も腎移植の適応にはなりません。
透析合併症や糖尿病に伴って動脈硬化が高度に進行し、移植に適した動脈がないかたも手術ができません。
また、献腎移植の場合には、ドナーの血液とクロスマッチテストをして陽性になったら、 移植直後に超急性拒絶をおこすので腎移植を受けることはできません。

手術前にどんな検査をするのですか?

生体腎移植を希望する人がおられたら、直接あるいは主治医の先生から電話をいただいて、レシピエントとドナー候補がいっしょに初診出来る日を決めて、 当方でその日にクロスマッチテストの予約をとっておきます。
外来初診時には、院内コーディネーター立ち会いのもとで、移植担当医が両者について問診、診察を行い、 腎移植の長所と短所、手術方法、合併症を説明します。
さらにクロスマッチ用採血、健康状態や感染症をみる採血、血液型判定、検尿、胸腹部のレントゲン、 心電図、肺機能検査などの一次検査を行って帰宅して頂きます。

数日して、これらの結果に問題がないことを連絡するとともに、レシピエントとドナー候補の意思が変わらないことを確認し、 二次検査を受けるかどうかを決めます。 ドナー候補の二次検査は、
 1.腎機能検査(腎シンチ)、
 2.腎・血管の形態検査(エコー、CT)、
 3.心機能検査(心エコー)
を基本的には1日、外来通院で行います。

三次検査は
 1.癌検診(胃癌、大腸癌、子宮癌、乳癌など)、
 2.感染症の除外
などを行いますが、自宅近くの病院で受けられても結構です。

レシピエントの二次検査は
 1.心血管系検査(心エコー、CT)、
 2.癌検診(腎癌、胃癌、大腸癌、子宮癌、乳癌など)、
 3.感染症の除外(歯槽膿漏、蓄膿症など)、
 4.膀胱機能検査、
 5.必要なら抗体検査(FlowPRA, FCXMなど)
を外来通院で行います。
また、移植手術までに、
 1.本人がそれぞれ確認できる書類(運転免許証など)、
 2.間柄を確認できる書類(戸籍謄本など)の提出してもらい、
 3.当院精神科のインタビューを受けて、ドナーの自発的な意志で提供すること、 金品の授受がないことを精神科医の確認、カルテ記載を残すことが必要です。

クロスマッチテストとは何ですか?

レシピエントとドナーの血液を混ぜ合わせてみて、レシピエントの血液中にドナーの臓器を攻撃する抗体がないかを調べます。
そのような抗体が存在する場合、クロスマッチテストは陽性であるといいますが、 これは移植したとたんに移植腎に血栓ができて腎臓の血流がなくなってしまうことになりますので、 このままでは原則として移植をすることはできません。

以前に移植や輸血を受けたことがある人、妊娠歴のある人などがクロスマッチ陽性になりやすく、 米国の発表では腎移植希望者の30%にみられるといわれており(Terasaki)、大きな問題となっています。クロスマッチ陽性でも生体腎移植を希望された場合、 当科ではフローサイトメトリーという機械を使ってさらに詳しく調べたり、その結果によって血漿交換、脱感作療法などの前処置を行って陰性になったことを確認して腎移植を行うことがありますが、 困難な場合が多いです。

献腎移植の場合、ネットワークの規則で、Tリンパ球のクロスマッチテストが陽性であったときは、 そのレシピエントは腎臓や膵臓をもらうことはできません。したがって、20-30年も登録しているが当たらないとか、以前にクロスマッチ陽性でだめと言われたという待機患者さんは、 このような抗体を所有していないか、その種類と量の推測がフローサイトを使った検査で診断できる場合がありますので、一度当科にご相談ください。

血液型が違っても腎移植はできますか?

生体腎移植の場合、ドナーの血液型が同じである方が移植腎の機能が良好な傾向がありますが(文献)、 最近は術前の処置によって移植は可能となりました。
たとえば、O型からO型への移植を血液型一致、O型からA型への移植を血液型不一致、 しかし両方とも移植がそのままで可能なので血液型適合移植と呼びます。
B型からA型への移植をすると、A型のひとはB型に対する抗体を持っているので、 このままでは腎臓に血栓ができてしまします。 これを血液型不適合腎移植といい、あらかじめ血漿交換、免疫抑制剤投与、脾臓摘出などの治療をして抗体価を下げておいてから行います。 したがって、抗体価が低下しないひとや、いったん低下しても再上昇するひとには原則として移植できません。

献腎移植の場合は、ドナーと同じ血液型の人が候補として選定されるので、血液型不適合の献腎移植はありません。 また、最近は脾臓摘出をしないでリツキサンという制癌剤を用いて抗体産生を抑制する方法も国内外で報告が増えています。

HLA検査(組織適合性検査)は合っている必要がありますか?

簡単に述べると、血液型が違うというのは「赤血球」の相性が悪い、HLA検査(組織適合性検査)が合っていないというのは「白血球」の相性が悪いということですが、 腎移植を行うときはどちらの相性もあっているほうがよいというのが過去の概念でした。

HLA抗原は、父親と母親から半分ずつもらい、その組み合わせによって肌の色、顔形からリンパ球の特徴なども決まってきます。
移植の場合には、ドナーとレシピエントのHLA抗原を比べたとき、そのなかのA、B、DRという3組6個の数字が何個あっているかによって相性がわかります。
HLA抗原は拒絶反応の原因となる物質ですから、これが合うほど移植後の腎機能は良好です。しかし、免疫抑制剤や医学の進歩によって、現在では6個のうち6個合っているものと6個とも合っていないもの以外は移植後の機能に差がないので、 HLA抗原の適合は必須条件ではありません。

腎不全の原因によって腎移植はできないこともありますか?

腎不全になる原因は先天的、後天的に種々ありますが、一部の腎臓病では、原疾患(腎不全の原因になった病気)が、 移植腎に起こってくることがあります。
例えば、巣状糸球体硬化症(FSGS)などは、移植直後でも移植腎から大量の蛋白尿が流出し、腎機能が悪化することがあります。 また、糖尿病が原因で腎不全になった人は、腎移植を受けた後に糖尿病のコントロールが不十分であったり糖尿病が悪化すると、 すぐに移植腎に糖尿病性腎症が再発して機能廃絶となってしまいます。我々は安易に腎移植を引き受けるのではなく、 このように原疾患を考慮して、術前検査をすすめたり術後管理を行うように努めています。

子どもの腎移植もできますか?

幼児、小児の腎不全患者に血液透析を週3回行うことは困難な場合が多く、体の発育、骨の成長が障害されるので、内科、小児科と相談し、 ABO不適合であっても早期に腎移植をすすめています。

小児の腹膜透析や血液透析は正常の腎機能の10-20%の機能しかないため食事制限や水分制限のために充分な栄養摂取ができません。 特に、幼児の場合は腹膜透析のほうが多いので、胃が圧迫されたりして食事量が少なくなります。血液透析の場合は、 週に3回、病院に行って透析用の針を刺されるので精神的にも好ましいものでありません。
体重が20kg以上の小児では、成人と同様に手術します。移植腎と吻合する血管は、通常、腸骨動静脈を選択しますが、 それらが細すぎる場合は、大動脈や大静脈に吻合し、さらに成長に合わせて吻合も拡大して将来的に狭窄を起こさないような吻合方法を行います。 当科では小児科と協力しながら小児腎移植を行い、2006年には2歳で体重8kgのお子さんにお父さんの腎臓を移植することが出来ました。

下図に当科における小児腎移植11例をまとめましたが、透析導入前(Pre-emptive)の腎移植が3人おり、一人は腎性くる病で歩行が出来ませんでしたが、 腎移植3ヶ月後に装具をつけて歩行可能になりました。

当科における小児腎移植

生体腎移植のドナーは誰でもなれますか?

生体腎移植のドナーは健康であり、医学的・倫理的問題が無ければ、誰でもなることが出来ます。
しかし、現時点では日本のほとんどの施設は生体腎移植のドナーは血縁者(両親・兄弟姉妹・子供・近い親戚)または配偶者で、 原則として親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)以外の非血縁者間での生体腎移植は行われません。
現在は免疫抑制剤の進歩によって、非血縁夫婦間腎移植も親子間腎移植と変わらない移植腎生着率が得られています。
生体ドナーの条件は、
 1.医学的に心身ともに健康であること、
 2.自発的な意志で腎提供を申し出ていること、
 3.金銭や物品の授受がないこと、
 4.ドナー手術の安全性と危険性を充分理解して、術前後の医学的ケアに協力できること
があげられます。

九大病院では、
 1.レシピエント、ドナーの本人を確認するために、健康保険証、運転免許証、障害者証、パスポートなどのコピー、
 2.間柄を確認するために、戸籍謄本、住民登録証、
 3.コーディネーター、精神科医によるインタビュー
をお願いしています。

また当院ではABO不適合腎移植の際に行う脾臓摘出や血漿交換の負担を軽減するために、倫理委員会の承認をうけ、2004年に本邦初となる2組の夫婦間で交換生体腎移植を行いました。 このように、生体腎移植についてもドナー、レシピエントの双方について、厳格、多角的に検討することが必須条件で、必要に応じて移植学会の倫理委員会にも審査を依頼します。

ドナーは腎臓を1個あげても大丈夫ですか?

どんな手術についても当てはまりますが、100%安全というわけではありません。 腎摘出手術による死亡率は米国の古いデータでは0.03%(3333人に1人)とされています。
日本では生体腎ドナーが死亡したという報告はありません。生命に危険はないが、術後出血、感染、ヘルニア、気胸、麻酔薬による薬剤性肝炎、膀胱炎、 術後肺炎などが起こりうるとされていますが、頻度は非常に低いものです。
腎摘出後の腎機能は提供前のおよそ70-75%程度となりますが、 その後はほとんど変化しないとされ、それ自体で透析や移植が必要な腎不全になることは稀です。

しかし、もともとの腎機能が低いと、そのリスクが高くなるので、術前に腎機能が良好であることを調べておきます。 欧米のデータでは10年以上の後に透析に至るような腎不全の率は約1%未満とされます。 又、高血圧や蛋白尿などの出現は数%に見られるとされています。

生体腎移植手術

レシピエント手術はどのようにしてするのですか

2個ある自分の腎臓は原則としてそのまま残しておき、提供された腎臓を左右どちらかの下腹部に移植します。
下腹部を10cm切開し、足のほうに向かう腸骨動静脈を露出して、ここに腎臓の動静脈を吻合します。 腎臓に血流が流れてしばらくすると色調と固さが正常になって、 尿管が動き始め、やがて尿管から尿が流出してきます。充分な尿流出を確認して、尿管を自己の膀胱と吻合します。
生体腎移植で問題がなければ、1時間あたり数100ccの尿流出が観察されます。移植手術は全身麻酔で行い、約4時間が平均的な手術時間です。 当科の場合、レシピエントは手術前の2日前に入院し、経過が順調であれば、術後3-4週間で退院可能となります。

腎移植の皮膚切開の位置・移植腎の位置
実際のレシピエント手術写真
実際のレシピエント手術写真

生体ドナーの手術はどのようにしてするのですか

従来の直視下手術と内視鏡下手術の2通りがあります。
傷が小さいこと、術後の負担が少なく、回復も早いことから、 内視鏡下手術が多くなってきています。2002年以降、当科では内視鏡下手術がほとんどで、これまでに86例行っています。

なかでも、最近は安全性と確実性を兼ね備える、用手補助後腹膜腔鏡下腎臓摘出術(Hand-Assisted Retroperitoneoscopic nephrectomy:HARS)を多用しています。
左腎を摘出する場合、臍下正中部に5cmの縦切開を加え、ここから術者の左手を入れて、左側の後腹膜腔を拡げてスペースを作ります。 左側腹部に直径1cmぐらいの小さな穴を3個開け、その1個から内視鏡を挿入して、そこから映し出されるモニター画面を見ながら左腎を剥離・露出していきます。
充分に剥離がすんだら、腎動脈と腎静脈を内視鏡用の機械を使って切離します。中央から入れた左手で腎臓を体外へ引き出して、Bench surgeryで準備された冷却潅流を行います。 このころには他室でレシピエントの手術も始まって、すでに腸骨動静脈が露出されているので、Bench surgeryごと運搬します。

腎臓を摘出したあとは止血を確認し、吸収糸で創部を閉鎖して手術を終了します。手術は全身麻酔下で約3時間かかります。
後腹膜腔にカメラを挿入し腎臓を摘出するため、胃、腸、肝臓、膵臓など腹腔内臓器への影響が少なく、 また用手補助腹腔鏡下腎臓摘出術(Hand-Assisted Laparoscopic nephrectomy:HALS)で問題となる術後腸閉塞の心配がほとんどありません。 内視鏡手術であれば、術後5-7日で退院し、仕事も可能です。
これまでの86例のうち、腎周囲の癒着や不意の出血のために途中で直視下手術に移行した人が5例あります。輸血の準備はいつもしておきますが、 輸血をした人はひとりもいません。軽い腸閉塞や創部感染が4例ありました。以前に行っていた開放腎摘は30cmぐらい切開し、 術後疼痛もひどく、入院が長期であったことと比べると格段の差があります。全国調査でも、内視鏡手術でドナー腎摘出をする施設が増えており、 その有用性と安全性は高いと報告されています。

直視下腎臓摘出術
鏡視下腎臓摘出術

実際のドナー手術写真(皮切〜剥離)

実際のドナー手術写真(皮切〜剥離)

実際のドナー手術写真(腎摘出〜Bench surgery)

実際のドナー手術写真(腎摘出〜Bench surgery)

実際のレシピエント手術写真(Bench surgery〜移植)

実際のレシピエント手術写真(Bench surgery〜移植)

献腎移植

献腎移植とは何ですか?

脳死あるいは心停止後に亡くなられたドナーおよびそのご家族の篤志にて提供された2つの腎臓が、 ネットワークに登録された2人のレシピエントに移植されます。移植の優先順位は血液型、HLA適合度、待機年数などが考慮され、選定されます。

献腎移植はどこで登録することができますか?

各都道府県の献腎移植施設で登録できます。
ネットワークにご連絡いただき、登録票に現在透析中の病院での状況を記入していただき、 それをもって献腎移植施設を受診します。移植医の診察にて移植可能と判断され、記入してもらった登録票をネットワークに発送します。
さらに、初回登録料として3万円をネットワークに振り込んで、それが確認された日から待機患者としてネットワークに登録となります。 不明であれば、ネットワーク西日本支部(TEL:06-6455-0504)か、当科(TEL:092-642-5443)までお問い合わせください。

献腎移植登録の費用はどれくらいですか?

登録費用として登録初年度は3万円、その後1年に一度、献腎移植登録施設を受診して登録更新を行います。更新手数料は5,000円です。 移植自体は日本では保険適応となるため、患者負担はありません。

生体腎移植と献腎移植にはどのようなメリットとデメリットがあるのですか

(以下、Transplant Communicationより)
生体腎移植のメリットは、移植の日程をあらかじめ決めることができる点です。
このために、レシピエント自身も移植前に全身状態のチェックを綿密に行うことができ、 最善の状態で移植手術に望むことができます。また血液型不適合の移植などは、移植前に一定の期間をかけて治療を行うことによって、 生体腎移植でのみ移植が可能になります。したがって組織適合性の面からも、献腎移植に比べて生体腎移植のほうが適応範囲は広いといえるでしょう。
さらに、移植時の腎臓の状態が良好であるために、移植直後から尿が出るのが一般的です。ただし、生体腎移植においては健康な人がドナーとなるため、 臓器提供手術が安全に施行され、臓器提供後も健康な状態を維持できることが必須であり、ドナーに対する詳細な術前検査が必要となります。 また、ドナーの方も手術後は生涯にわたり定期的にフォローアップを続ける配慮が必要です。

これに対して献腎移植は、健康な人を傷つけないという点で、より自然な臓器移植の形であることが最大のメリットです。 また現状では、献腎移植の選択基準はHLA適合度が最優先されているため、組織適合性が良好であることが多く、 免疫抑制療法の進歩により移植後早期の拒絶反応による機能廃絶の危険性もほとんどないといえるでしょう。
ただし、提供者数がきわめて少ないのが現状であり、なかなか献腎移植の機会に恵まれないことが、最大の問題点といえます。
また生体腎移植とは異なり、移植直後から尿が出始めることは少なく、移植後もしばらくのあいだ透析療法を続ける必要性が高くなります。

生体腎移植と献腎移植はどうやって選べばいいのですか

生体腎移植と献腎移植のどちらを選択するかは、各個人の考え方や可能性に応じて限定される場合もあるでしょう。
あくまでも生体腎移植は提供者の自発的意思に基づくものであり、このような提供者がいなければ生体腎移植の可能性はなく、 献腎移植の登録をして待機することになります。生体腎移植を希望し、提供者の候補がある場合には、移植施設を受診する手続きをしてください。

家族にも移植の説明をしてもらえるのですか

もちろんです。各施設によりシステムは異なるとは思いますが、一例をあげますと、まず電話により外来予約をしていただき、 外来受診というかたちで移植の説明を行います。
外来では、あらかじめ必要事項をご記載いただいたアンケート用紙などを参照しながら、 移植の一般的な話や移植成績などの説明が行われます。 その際には、一般的な移植の資料や、各施設で独自に作成した資料が参考として配られる場合もあります。

移植を行ってくれる施設はどうやって見つければいいのですか

移植を希望した際には、透析の主治医にその旨を話して、しかるべき移植施設を紹介してもらうのが、いちばん自然な方法でしょう。
また、多くの移植施設は所属している病院あるいはその科としての独自のホームページをインターネット上に開設しており、 これにより各施設の状況を知ることも可能です。それらの情報に基づいて移植施設に連絡すれば、受診の機会をつくることができるでしょう。

海外での腎移植を紹介してもらうことはできますか

日本移植学会の倫理指針では、患者さんを移植目的で海外の施設に紹介する際、
 「売買された臓器によって移植が行われないこと」
 「受刑中や死刑が執行された者からの臓器によって移植が行われないこと」
を確認することが前提となっています。
前述の問題点がない施設への紹介はありうるわけですが、現実的には厳密な確認が難しく、海外での腎移植の紹介はほとんど行われていません。

献腎移植希望者として登録している人(待っている人)はどれくらいいるのですか

2007年1月4日現在、全国で1万1,915名が登録しています。
全国の透析患者数は年々増えて25万7,765人(2005年12月31日現在)ですから、 透析されている方のうち約5%の方が登録していることになります。登録者の男女比は、約2:1です。ブロック別でいうと、人口や移植施設数の違いも影響し、 関東甲信越、東海北陸、近畿の順番で多く登録されています。
登録者の内訳(男女、ブロック、血液別)のデータの詳細は、 日本臓器移植ネットワークのホームページ(http://www.jotnw.or.jp/)に掲載されています。

登録後、どのようにして移植候補者に選ばれるのですか

まず、ABO式血液型の一致が第一条件となります。
その次に、
 ・腎臓提供施設と移植実施施設の所在地ポイント(ドナー発生県と同一県内に所在する移植施設の登録者のポイントが高い)、
 ・HLA型のミスマッチ数ポイント(ミスマッチ数が少ないほどポイントが高い)、
 ・待機日数ポイント(登録期間が長いほどポイントが高く、一定式により計算される)、
 ・小児ポイント(16歳未満の登録者にはポイントが加算される)
の合計点が多い順に優先となります。
これらの条件が同一の移植希望者が複数存在した場合には、臓器搬送に要する時間、医学的条件が考慮されます。最終的には、リンパ球直接交差試験陰性が必須となります。

この基準により、2002年に提供された腎臓の8割は同一都道府県内で移植され、小児への移植は全体の8.1%行われました(移植ネットワークニュースレターVol.7, 2003)。 また現在では、HCV抗体陽性の方から献腎があった場合は、HCV抗体陽性の登録者のみを対象として選定が行われます。 福岡県の場合、長年の腎臓提供施設に対する運動が奏功し、2005年には、人口あたりで多くの献腎提供が行われました。 県内の登録患者は約350名、2005年の献腎移植数は18例でしたので、当たる確率は1/20ですから、「宝くじにあたるようなものだ」と思いこんで、 登録をあきらめていた透析患者さんは希望を持ってほしいと思います。

最初に登録した移植施設を途中で変更することはできますか

できます。
施設変更のご希望がある場合は、移植施設所在地の都道府県を管轄している移植ネットワークの支部に連絡を入れていただくか、 登録更新の時期に届く「更新用紙」にその旨を書いてください。
地域によっては、新たに希望する移植施設を受診していただくことが必要になります。

移植候補者として選ばれたら、誰からどうやって通知されるのですか

通常は、登録している移植施設の担当医や移植コーディネーターから、電話で連絡が入ります。
移植ネットワークのコンピュータに登録されている連絡先(自宅や勤務先の電話番号、携帯電話番号等)に連絡します。 ドナーはいつ現れるのかわかりませんので、移植候補の連絡もいつくるかわかりません。真夜中に電話がかかってくることもよくあります。 移植登録をしたら、夜中でも電話の着信音量を下げずに、いつでもどこでも連絡がとれるようにしておきましょう。
また、連絡先に変更があったら、移植ネットワークの支部に報告することを忘れないでください。

いつまでに移植を受けることを決めればいいのですか

最終的には、移植前に行われるリンパ球直接交差試験結果が出るまでだと考えます。
しかし、移植手術を受けるに際し、移植施設で心肺機能や全身の精査をしなくてはいけないので、決定は早ければ早いほどよいといえます。 また、上位候補者が辞退すれば、下位候補者に連絡をしなければなりません。 スムーズな意思確認のためには、できるだけ早く意思決定をすることが重要だといえます。
移植の意思確認の連絡では、突然のことにびっくりされて、とまどう方がほとんどです。すばやい意思決定は難しいでしょうが、 登録をした以上はいつ連絡がきてもいいように、日ごろから心構えをしておくことが大切だといえます。 福岡県内の献腎摘出は九大チームが行いますので、移植候補者として当科の待機患者さんが当たった場合、1時間以内の意思決定をお願いしています。
普段からご家族と移植のことをよく相談しておいてください。また、そのときに発熱、感染症、悪性腫瘍があれば移植をうけることが出来ません。 普段から癌検診をうける、感染症にかからないなど、健康管理に充分注意してください。

自分の都合で移植の連絡を断ってもかまいませんか

はい、結構です。
お断りになったことで、次の移植の機会にマイナスになることはありません。移植の連絡をして即答される方は、 なかなかいません。また、最初は「移植を受けます」と答えても、移植施設で検査を受けた後に「やっぱりやめます」と言われる方もいます。 それだけ迷う、重要な意思決定だと思います。透析か移植か、どの腎不全治療を選択するのか、よく考えて選ぶのは、患者さん自身です。

移植を受けることを決めたら何をすればいいのですか

移植手術のための入院準備をしてください。
入院に必要なものを準備すること(保険証、障害者手帳、寝巻き、洗面具等)、 また、入院は月単位にわたることがほとんどですので、仕事や学校の休みの調整も必要になります。
移植手術がリンパ球直接交差試験の結果判明直後に行われるような場合(腎臓摘出が終了している場合)は、 手術に備えてその後の飲食を控えることも必要になります。透析施設には移植をする旨、通常移植施設や移植ネットワークから連絡が入りますが、 患者さん自身からも一言、主治医の先生に伝えておくことをおすすめします。移植施設から「病院に来てください」という連絡があったら、 必要なものを持って、安全に確実に病院に着けるよう、お出かけください。

免疫抑制剤にはどのようなものがありますか

現在、使用されている免疫抑制剤の中心は、カルシニューリン阻害剤とよばれるもので、 シクロスポリンとタクロリムスの2種類があります。
これらを基本免疫抑制剤として、その他に代謝拮抗剤、ステロイドなどのカテゴリーから選んで組み合わせて用います。 さらに現在もさまざまな薬剤が開発中であり、 表におもなものを記載します。 また、当科でおこなっている免疫抑制療法の標準例を提示しておきます。

免疫抑制剤

免疫抑制剤の副作用にはどんなものがありますか。

免疫抑制剤のうち、カルシニューリン阻害剤に共通した副作用としては、腎臓に対する毒性があります。
この腎毒性が慢性的に継続すると移植腎機能の低下につながるため、薬剤の減量を考慮します。 また、シクロスポリンには高脂血症が比較的多く、タクロリムスには膵毒性による耐糖能異常が比較的多くみられます。 このため、これらの薬剤は適正な濃度管理を行い、投与量を調節するとともに、副作用に対しては治療薬を併用します。 代謝拮抗剤には骨髄抑制の副作用があり、白血球の減少や貧血などがありえます。この他、アザチオプリンには肝障害、 ミゾリビンには高尿酸血症、セルセプトには下痢などの消化器症状がほかの薬剤に比較して多いとされています。

副作用の程度により、投与量の減量あるいは中止を行います。ステロイド剤には「満月様顔貌(顔が丸くなる)」や 「骨がもろくなる」「耐糖能障害」の可能性があります。骨がもろくなることに関しては、 大腿骨の頭がつぶれて痛みが出ることがあり、この場合にはステロイドの減量とともに整形外科的治療が必要となります。

いつまでも免疫抑制剤を服用しなければならないのですか

通常は、移植腎が生着している限り、免疫抑制剤を継続します。
しかしながら、移植後の期間が長くなるにつれ、 拒絶反応のリスクは減少するため、薬の減量は可能であり、またそのようにされています。 免疫抑制剤の中心であるカルシニューリン阻害剤は、血中濃度を測定して必要最低限の量を投与するようにしています。 また、少数ですが小児や糖尿病の方を中心にステロイドの減量・中止を行っています。

腎移植後の合併症にはどのようなものがありますか

Transplant Communicationによると、以下の表に示すように、外科的あるいは内科的合併症に分かれますが、 外科的合併症は移植症例が多い施設であれば問題になることは少ないでしょう。 内科的合併症も拒絶反応にかかわるものは、術前検査の進歩あるいは免疫抑制療法の進歩により、 通常は回避可能です。現実的に、当科では、創感染、膿瘍、血腫が1例ずつ、リンパ嚢腫が2例、腎動脈狭窄が2例あるのみです。


腎移植後の内科的合併症

拒絶反応とはなんですか?

人間の体は最近やウイルスなど自分以外のものが体に進入すると、病気にならないようにこれらを免疫力で攻撃し排除します。
移植された腎臓は自分と異なる異物ですから、免疫力は移植した腎臓を排除しようとして働くために、拒絶反応がおき腎機能が悪化しますし、 放置すれば尿が出なくなってしまします。前項の内科的合併症の表にあるように、拒絶反応は一般的に超急性拒絶、急性拒絶、慢性拒絶の3つに 分類されます。

超急性拒絶反応は、レシピエントがドナー腎に対してあらかじめ抗体を作っていたようなときに起こり、 移植して間もない時期に血流が途絶えてしまいます。以前に移植を受けたことがある人、輸血を受けた人、 妊娠・出産歴のある人にこのような抗体ができやすくなるので、免疫学的にハイリスクと言えます。超急性拒絶が起こらないように、 移植前にドナーとレシピエントの血液を採取してクロスマッチテストが陰性であることを確かめておきます。
九大病院では、2006年から、フローサイトメーターという機械を用いて微量な抗体や反応を見ることができるようになり、 必要に応じて血漿交換や抗体療法を行っています。
急性拒絶反応は、レシピエントのリンパ球が移植腎を攻撃する反応で、移植後1週間以降からいつでも起こり、 程度の軽いものから重篤なものまであります。急性拒絶反応の徴候には、尿量減少、移植腎腫脹・疼痛、発熱、体重増加などがありますが、 そのような変化がなくても、血清クレアチニンの上昇、尿中リンパ球出現、超音波検査で腎臓内の血流低下などの検査所見からも拒絶反応が疑われます。 最終的には腎生検で判定しています。
腎生検は、局所麻酔をして、超音波で見ながら腎臓を細い針で刺して組織を一部採取します。 当科では、このような自覚症状がなくても、移植後1週目、4週目、3ヶ月目、6ヶ月目、1年目には定期的に腎生検をして 拒絶反応がないことを確かめています。

慢性拒絶反応は移植後3カ月以降におこってくるもので、月単位から年単位のゆっくりとした速さで腎機能が悪化します。 その原因は、軽微なリンパ球や抗体の攻撃が長期にわたり持続したり、あるいは動脈硬化、薬剤の腎毒性、糖尿病など が少しずつ腎臓に障害を加えて腎機能が低下したものです。腎機能が悪化してからの治療ではあまり効果はありません。 移植腎機能が低下する前に拒絶反応がわかれば免疫抑制療法で治療します。 発症を予防したり進行を遅らせることができるので、 早期発見が重要になります。動脈硬化にならないように高血圧や高脂血症のコントロールをしっかり行い、 できるかぎり免疫抑制剤の使用量を減らしていくことなどが予防や進行の防止になります。

急性拒絶反応の治療は?

拒絶反応の程度によって、ステロイドやほかの薬剤を用いた治療を開始します。
この間は、免疫抑制療法を強化することになるため、ウイルス感染の予防薬やステロイドによる潰瘍を予防するための抗潰瘍薬をあわせて飲んだりします。

1. ステロイドパルス療法
ステロイドを一時的に大量に点滴投与することにより拒絶反応を治療します。いずれの拒絶反応のタイプでも最初に試みられます。

2. OKT-3
ステロイドパルス療法で治療しても治らない強い拒絶反応(ステロイド抵抗性拒絶反応)に使用します。 その作用は強力ですが免疫抑制剤の中では最も強い副作用があります。

3.スパニジン
ステロイド抵抗性拒絶反応に用いられることが多いです。

4.内服している免疫抑制剤の変更、増量
ネオーラルからプログラフに変えたり、アザニンからセルセプトに変えたりとより強力な内服薬に変更する場合があります。また、同じ免疫抑制剤でも増量して内服する場合もあります。

5.血漿交換
抗体が関与している拒絶反応の場合、抗体を体内から除去しなければ拒絶反応は治癒しません。 そのため抗体が含まれている血液の中の血漿とよばれる成分を、献血された血漿と交換することにより抗体を除去し拒絶反応を治療します。

6.リツキサン
拒絶反応を起こす抗体を産生するリンパ球(B細胞)に対する治療薬です。

7.大量ガンマグロブリン療法
輸血製剤から精製したガンマグロブリンを大量投与します。 海外ではかなりの効果が報告されていますが、日本では保険適応がありません。

腎生検は何のために必要なのですか?

移植腎機能が悪くなる原因は拒絶反応だけではなくいろいろな原因がありますので、 それぞれの原因にあわせた治療法を決めるために腎生検を行います。
ときには腎機能が悪くなっていないのに、定期的に生検をすすめる場合もあります。 これはみかけの移植腎機能が安定していても、実はゆっくり拒絶反応が進行している場合があるからです。 この場合自覚症状はまったくなく、 採血でもクレアチニンの上昇がありませんが、しばらくすると少しずつ腎機能が悪化してしまいます。

拒絶反応の治療で感染症の危険が増えると聞きましたが?

拒絶反応の治療中は原則的に免疫抑制の強化となるため 細菌感染、ウイルス感染の危険が高くなります。多くの場合、拒絶反応の治療は入院して充分に管理を行うことが必要です。

移植後、外来にはどれぐらいの頻度で通院しますか?

個人差はありますが、移植後半年まで、あるいは拒絶反応後、免疫抑制剤調整時期では1〜2週間に1度は通院が必要です。
状態が安定すれば1ヶ月〜2ヶ月に1度の通院となります。

移植後に妊娠・出産はできますか?

移植後腎機能が安定しており、蛋白尿がなく、条件を満たせば妊娠、出産は可能です。妊娠中は免疫抑制剤の調整が必要となります。

腎移植レシピエントの妊娠を考えるときの基準

腎臓を長持ちさせるためには?

免疫抑制剤、内服をきちんとする。
外来通院をきちんとする。
食事に気をつける。
自己管理、体重のコントロールをする。
節度ある生活を心掛ける。
必要な腎生検を受ける。
禁煙をする。
癌検診を受ける。

透析と腎移植にかかる費用と保険はどうなっていますか?

腎不全になって、診療・投薬、透析療法、腎移植を受けるための医療保険制度も、2006年4月からの障害者自立支援法によって変更になりました。 自己負担がどれくらいになるかに焦点をあてて、医療費を調べてみましょう。

<透析の医療費>

腎不全になって診察、治療を受けると、かかった医療費の7割は 1.健康保険(社会保険、国民健康保険など)から支払われて、 3割が自己負担として病院の窓口で請求されます。
腎不全の進行度に応じて、この自己負担分を軽くする特別の制度があります。これを受けるための第1歩は、障害者手帳の申請です。 原則的には、血清クレアチニン値が3.0mg/dlを超えると4級、5.0mg/dlを超えると3級、8mg/dlを超えると1級を取得することができ、 8mg/dlくらいになると多くの場合、内科の先生は透析導入を考えるようになります。
身体障害者手帳の申請は、腎臓内科の先生、あるいは当科でも可能ですので、問い合わせて下さい。

人工透析を必要とする慢性腎不全のかたは、 1.健康保険 2.特定疾病療養受療証 3.自立支援医療(更正医療) 4.重度障害者医療費助成(障害手帳1級の人のみ)が受けられ、 結果として、自己負担はほとんどありません。
福岡県、福岡市、北九州市では、血清クレアチニンが8mg/dl以下で1級認定がなくても 透析を受ける人に対しても、重度障害者医療費助成が受けられる可能性があります。 国の制度の自立支援医療は23%の人が、地方自治体の制度の重度障害者医療費助成制度は約80%の人が受けています(2001年度血液透析患者実態調査報告書)。

なお、18歳未満の子供に対しては、自立支援医療(育成医療)、あるいは小児慢性特定疾病治療研究事業を受けることで、 同様に自己負担分への助成があります。18歳未満で認定されれば、20歳になる日まで小児慢性特定疾病治療研究事業の補助が継続できます。手続き窓口は居住地を管轄する保健所になります。身体障害手帳1級であれば重度障害者医療費助成も受けられます。

ちなみに、実際に1人の患者にかかる透析の総医療費は年間400万〜500万円と言われます。

<腎臓移植の医療費>

腎臓移植に関する医療費は健康保険の対象となっていますから、患者が支払うのは一定の割合の自己負担分のみです。 その自己負担分も、以下のようなさまざまな制度によって大幅に軽減されます。

― レシピエントの手術・入院費用 ― 
レシピエントの移植入院費用については、
1.健康保険 
2.特定疾病療養受療証 
3.自立支援医療(更正医療・育成医療) 
4.重度障害者医療費助成
が受けられ、 医療費の負担は透析のときと変わりありません。
血清クレアチニン値が5mg/dlなどで透析を全く受けないまま移植をされる方は、身体障害者手帳(3級)の申請と自立支援医療の手続きは行ってください。 自立支援医療が受けられれば世帯の収入に応じて自己負担は軽減されます(最高でも月2万円)。 身体障害者1級でない方は、移植後に身障者1級を取得することが可能です。18歳未満の子供の場合も、 移植に関する医療費の負担は、透析のときと変わりありません(詳細は透析の医療費の項目参照)。

― 生体腎移植におけるドナーの検査・手術・入院費用 ―
生体腎移植のドナー候補者の腎臓提供前の検査は病気の受診ではないので、保険が適用されません。 その検査料は原則、全額自己負担となりますが、九大病院の場合、標準的な検査のみで終了した場合には負担額は5〜10万円となります。 腎臓提供のための手術・入院にかかる医療費は、移植がすんだあとにレシピエント側の医療費からまかなわれますので自己負担はほとんどありません。 退院後の定期健診やがん検診は保険診療となりますから3割負担です。

― 退院後の通院検査・免疫抑制剤の費用 ―
透析患者が腎臓移植を受けた後も、身体障害者1級の資格は継続されます。 退院後は、特定疾病療養受療証は原則として使えなくなりますが、 1.健康保険  
2.自立支援医療(更正医療・育成医療) 
3.重度障害者医療費助成制度
により、医療費の負担は透析の場合と変わりはありません。
九大病院の窓口で1部負担した場合でも、 重度障害者医療証をお持ちの方は、居住地の役場で手続きを行えば還付の対象となります。
ちなみに、実際にかかる医療費総額は医療機関や患者の状態によって異なりますが、 一般的な例を挙げると、移植手術を含む最初の1年で400万円、2年目で年間150万円です。移植後、時間がたつほど減っていきます。

腎移植を受けたら身体障害者認定はなくなりますか?

移植後も身体障害者手帳1級の資格は継続されます。 免疫抑制剤を内服している間は、腎臓機能に障害があると考えられるからです。 したがって、国による公費補助や地方自治体による重度身体障害者医療助成制度の対象となります。  3級、4級で腎臓移植を受けたかたは、移植後に1級を申請することができます。

腎移植後も障害者年金を受けることができますか?

透析の場合は障害年金2級に該当します。しかし、移植を受けた場合、透析からの離脱と移植した腎機能の安定により、 支給停止や等級変更になる可能性があります。
移植後、次の現況届(診断書)を出すように指示があるまでは引き続き受給できます。移植後1回目の診断書提出においては、 それまでの等級で認定されることになっており、ただちに支給停止等になることはありません。

しかし、その後の現況届時に、移植した腎機能が順調であれば障害年金の支給停止、または2級から3級への等級変更になる可能性は高いと言えます。 障害基礎年金の場合は、3級の規定がなく事実上支給停止となります。透析のときに障害年金の申請していない方でも一定の条件があえば、 移植手術後であっても、一定期間(最高5年)さかのぼって支給されるケースがあります。

透析や腎臓移植に関わる費用は居住地、医療施設によって異なる場合があり、 障害年金は腎不全のもととなる病気(腎炎や糖尿病など)の初診日や透析導入日によっても異なることがあり、 我々も理解不十分なところがあります。

質問があるかたは、
1.当ホームページへの質問コーナー
2.第1外科移植グループ TEL: 092-642-5443
3.九大病院の地域医療連携センター TEL: 092-641-1151(代表): info-renkei@med.kyushu-u.ac.jp、
4.福岡腎臓病患者連絡協議会(福腎協) TEL: 092-713-8020:fjk@titan.ocn.ne.jp 
へお気軽にお問い合わせください。
九大患者会(あかつき会)の皆様も非常に明るく積極的です。福腎協やあかつき会の人たちは体験談を語ってくださいますし、生活や仕事の悩みなども気軽に相談にのってもらえます。
腎不全という病気にかかっても、 それはあなたの責任ではありません。病気に立ち向かい、前を向いて人生を歩んでいきましょう。