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留学だより

当科では、たくさんの先輩方が海外留学をしています。そのいくつかをご紹介いたします。

留学だより 1
テキサス州 ヒューストン MD Anderson Cancer Center

(2011年入局) 岐部 晋

アメリカ マサチューセッツ州 ボストン ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター

はじめに

 2019年4月から米国マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学医学部付属ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター(BIDMC)へ研究留学して2年が経ちます。 これまでの留学生活を通して思うことをご報告します。


留学までの経緯

 私は2年間の初期研修の後、九大第一外科に入局して5年間、関連病院で消化器・一般外科医として修練を積みました。 その後3年間、第一外科の膵腫瘍研究室で大学院生として膵癌の基礎研究に従事していました。 大学院時代に米国膵臓学会(APA)や米国消化器病週間(DDW)など国際学会での発表や海外の研究者の研究動向に触れ、また、国際学会の際に留学されていた医局の先輩方を訪問し、 留学生活を垣間見る機会などを通じて、海外留学への魅力を感じました。

米国での研究

 私はPostdoctoral Research FellowとしてBIDMCのKun Ping Lu教授のTranslational Therapeutics Cancer研究室で膵癌に対する新規治療法の開発を目指した研究を 行っています。特に、癌の様々な分子シグナル制御に重要なタンパク質のリン酸化後に、cis-transの異性化を行うことで実際に種々の標的リン酸化タンパク質の機能を制御 しているプロリン異性化酵素を阻害することで癌のマルチパスウェイを同時に治療標的とする新規ペプチド製剤の創薬と、候補製剤と既存の抗癌剤や免疫チェックポイント 阻害剤との併用による相加・相乗効果の検証を膵癌オルガノイドや遺伝子改変膵癌マウスなどの前臨床モデルを用いて行っています。ボストンには、専門分野が異なる様々な 研究機関が共同研究を進めるための研究統括機関があり、各々の専門領域の強みを活かした共同研究の活発さと迅速性、さらに競争の激しい研究環境の一端を常に肌で感じます。 日本でも恵まれた環境で充分に研究ができると思いますが、各分野の第一線で働いている海外の研究者達と接し、研究に対する熱い思いや姿勢を直に感じる体験は留学ならでは と思います。


留学生活について

 ボストンは米国北東部ニューイングランド地方最大の都市で、ハーバード大学をはじめ、マサチューセッツ工科大学など、多くの大学や研究機関が集まる学術都市です。 ボストン美術館やボストン・レッドソックスのホーム球場などもあり文化・スポーツ施設も充実しています。また、米国で最も古い歴史を持つ街のひとつでもあり、 新旧様々な建物が立ち並ぶ美しい街です。4月に渡米した直後は季節外れの寒さに驚き、文化の違いに戸惑うことも多々ありましたが、すぐに米国での生活リズムにも慣れ、 今では家族も米国生活を楽しんでいます。コロナや大統領選挙など激動の年でもありましたが、多種多様な文化・価値観を持つ人たちとの交流など、 自分だけでなく家族にとってもかけがえのない時間を過ごせたと思っています。


おわりに

 大学院や留学での基礎研究を通して、一つの事象に対して論理的に深く考え、探究する習慣が身につくことは有意義だと思います。 臨床では日々の業務に追われ、立ち止まって考える余裕があまりなかったように思いますが、今後、臨床の疑問にぶつかった際に必ずや活きてくると考えています。 第一外科の自由闊達な雰囲気の中で、医局員の希望にも最大限にチャンスを与えて下さる医局の先生方に感謝申し上げるとともに、 これから外科医として研究や留学を考えている方々の少しでも参考になれば幸いです。


留学だより

当科では、たくさんの先輩方が海外留学をしています。そのいくつかをご紹介いたします。