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留学だより

当科では、たくさんの先輩方が海外留学をしています。そのいくつかをご紹介いたします。

留学だより 4
カリフォルニア州・City of Hope滞在記2

(2012年入局) 森 瞳美

アメリカ カリフォルニア州 ロサンゼルス City of Hope (その2)

はじめに

 どこまでも続く青い空とサンガブリエル山脈の雄大な景色は、毎日見ても飽きることがありません。2018年9月から日本学術振興会の特別研究員(DC1)として、 ここロサンゼルスにあるCity of Hopeに留学し、2年目になります。がん生物学分野のShiuan Chen教授のもと、 アメリカとアジア各国から集まった7名の研究者で乳癌に関するプロジェクトを進めています。


Chen教授(左端)とラボのメンバーが、ランチルームでお誕生日のお祝いをしてくれました。

カリフォルニア州を飛び出してアメリカの大自然を満喫

 こちらでの生活も10ヶ月を過ぎると研究も軌道に乗り、少し余裕も出てきたので、子ども達の夏休みと冬休みに1週間ずつ休暇をいただき、 家族でロードトリップに出かけました。 夏は、北へ! モンタナ州・アイダホ州・ワイオミング州にまたがる世界初の国立公園・イエローストーンを目指し、ザイオン国立公園(ユタ州)、 グランドティトン国立公園(ワイオミング州)と、日本の本州をぐるりと1周できるほどの距離を自家用車で移動しました。 バッファローやエルクなどの野生動物を間近で見たり、世界最大の間欠泉に圧倒されたりと、衝撃の連続でした。 冬は東へ! ニューメキシコ州にある世界最大級の鍾乳洞・カールズバッド洞窟群国立公園を目標に、アリゾナ州のサボテン天国・サワロ国立公園、 巨大な珪化木がごろごろと転がっている化石の森国立公園などをめぐりました。 国立公園のビジターセンターでは、 子ども向けに「ジュニアレンジャーブック」が配られており、課題にクリアすると「ジュニアレンジャー」の称号と立派なバッジがもらえます。 4歳と6歳の娘たちはバッジ集めに夢中で、親も一緒に学ぶ良い機会になり、すっかりその地域の動物や植物について詳しくなることができました。


アナハイムのエンジェルス・スタジアムにて。初めて観戦した日、大谷翔平選手が15試合60打席ぶりの豪快な15号ホームランを放ちました。 大リーグの楽しさにすっかり魅了され、何度も球場に足を運びました。2020年シーズンもチケットを予約していますが、 新型コロナウイルスのため延期となっています。

カリフォルニア州全土の都市封鎖で生活が一変

 2020年1月中旬、アメリカで初の新型コロナウイルス感染者が確認されました。しばらくは落ち着いているように見えましたが、 3月中旬から急速な感染拡大が起こり、4月下旬には米国内の感染者累計が100万人を超え、感染者数・死亡者数ともに世界最悪となりました。 カリフォルニア州では、3月19日に全米でいち早く外出禁止令が発令された影響からか、感染者数はニューヨーク州の10分の1程度です。 しかし、5月15日現在、ロサンゼルス群で毎日約1000人の新規感染者と約50人の死亡者という数字が更新されていくのを見て、恐怖を感じます。 City of Hopeでは、外出禁止令の1週間前から全職員・患者さんの検温・問診が始まり、発令後はラボや動物実験施設へのアクセスが制限されました。 PDXモデルを維持するために必要最低限の手術をおこなう以外、ほとんどの時間は、自宅で論文を書く日々を送っています。 週1回のウェブミーティングでラボのメンバーに会えるとホッとします。 長女の小学校は、外出禁止令の1週間前から休校になり、結局、夏休み終了までの5ヶ月間の自宅学習が決定しました。 週2回のオンライン授業と、英語・算数アプリでの学習のほか、音楽・体育・アートの課題はYouTubeのリンクが送られてきます。 人気のポップソングに合わせてダンスをする体育の課題は、特に娘のお気に入りです。子どもたちにとってもストレスが多いこの特殊な状況の中で、 楽しみながら学べるような工夫をしてくださるのは、アメリカらしいなと感じています。次女の保育園でも週1回、先生とお友達とオンラインでお話ししています。 この文章を書いている今、外出禁止令発令から2ヶ月が過ぎようとしています。街はいまだにゴーストタウンのようです。 発令直後はスーパーから食料品や生活用品が消え不安になりましたが、なんとか持ちこたえて籠城生活を送っています。 多様なエスニシティやバックグラウンドを持つ人々が暮らすカリフォルニア州では、人口の15%近くがアジア系だということもあり、 アジア人だからということでコロナ差別やヘイトクライムを受けることは少ないですが、やはり緊張感が高まっています。 留学に同行してくれた家族へ申し訳ない気持ちと、それでも一緒に乗り切るために頑張ってくれている姿に感謝する日々です。

私は研究者として留学をしておりますので、自宅勤務の時間が長いのですが、日本の病院で仕事をされている先生がたのストレスはいかばかりかと、 胸を痛めていると同時に、頭がさがる思いで日本のニュースを追っています。 どうか、この海外便りがみなさまのもとに届く頃には、終息の兆しが見えていますようにと、心から願うばかりです。

おわりに

 今年1月に一時帰国し、無事に学位取得と大学院を早期終了することができました。2020年4月からは学振特別研究員のポスドクとして研究に励んでおります。 この場をお借りして、学位取得までご指導いただき、貴重な留学の機会を与えて下さった中村雅史教授をはじめ、 久保真先輩、甲斐昌也先輩、そして研究にご協力くださった諸先輩、後輩のみなさん、関係者の方々に心から感謝申し上げます。

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