診療案内
肝胆膵外科
年間50〜60件の膵頭十二指腸切除術を行っており,
難易度が高い本術式も徐々に鏡視下手術の割合が増えてきています。
1.胆管がんとは?
胆管は胆汁が流れる管(くだ)であり、肝臓で作られた胆汁は1本の胆管に集められ十二指腸へと排出されます。この胆管に発生した悪性腫瘍を胆管がんと呼びます。胆管は、肝臓の出口周辺(肝門部領域)と、その下流の部分(遠位)に大きく分けられます。それぞれの部位に発生した胆管がんを、肝門部胆管がん、遠位胆管がんと呼びます。胆管がんができると胆汁の流れが悪くなるので、皮膚や目が黄色くなる黄疸という症状がでます。黄疸があるときは、胆管がんの可能性を考えて検査を行う必要があります。
胆管がんを根治する唯一の方法は外科的切除です。したがって、“がんを残さず切除できるか否か”が治療法を決める上で重要になります。胆管がんと診断されたら精密検査で、がんの大きさや、周りの組織への浸潤の具合、リンパ節や遠隔転移の有無を明らかにし、“切除できるか否か”の判定を行います。
2.肝門部胆管がん
肝門部は、文字どおり肝臓の門として血液が流入したり胆汁が排出したりする部位で、造りが複雑です。この部位に発生した肝門部胆管がんでは、侵襲の高い難しい手術が必要になります。正確ながんの進展度診断と手術に向けた全身状態の向上が、治療の第一歩となります。手術後は、元気に退院し日常生活に復帰いただくために、合併症の対策やリハビリの強化など緻密に管理を行います。退院後は、再発を予防するために抗がん剤の内服を行います。また定期的に画像検査を行い、再発がないか確認していきます。
肝門部胆管がんの治療の流れ
3.肝門部胆管がんの診断
がんが、胆管のどの部位まで進展しているかによって、切除方法(術式)が変わります。当科では、胆管内からの超音波検査や、胆道鏡を使った組織生検など様々な方法を組み合わせて、がんの進展範囲を診断しています。
様々な技術を駆使して、
がんが胆管のどの部位まで進展しているのか診断します。
最適な術式を決めるのに非常に重要です。
4.肝門部胆管がんの手術を安全に行うために
肝門部胆管がんの手術では大量の肝切除と、胆管と空腸の吻合が必要になります。重篤な合併症が起こりうる大手術ですので、元気に退院していただくために、手術前から様々な取り組みを行っています。
- 手術前のリハビリテーションによる体力強化
- 腸内環境正常化による栄養/抵抗力の強化
- 切除後の肝機能を考えた適切な胆道ドレナージ
- 切除の肝不全を予防する門脈塞栓術
侵襲の高い肝門部胆管がんの手術を安全に行うには、
手術に向けた全身状態の向上と、体力・栄養の強化が重要です。
胆道ドレナージ
うっ滞した胆汁を逃がし黄疸を取る処置です。手術後に残存する側の肝臓を正常化します。
門脈塞栓術
切除する肝臓の門脈血流を遮断し、残る方の肝臓を肥大化させます。
肝の再生能力を利用したもので、手術の肝不全を予防します。
5.肝門部胆管がんの基本術式
がんの進展範囲に応じて、肝門部の胆管を肝臓ごと切除します。がんの取り残しがないように、迅速病理検査で胆管の断端を調べ、断端にがんを認めるときは追加切除を行います。広く進行している場合は、膵頭部や、肝動脈・門脈といった重要な血管を合併切除することもあります。一方で、切除範囲を縮小できる時は肝外胆管切除に留めるなど、過不足のない切除を心がけています。胆道がんの手術は高度な手技を要するため、手術件数の多い施設で行うことが胆道がん診療ガイドラインで推奨されています。
がんの進展範囲に応じて、肝臓と胆管を切除します。
がんを取り残さないように、手術中に迅速病理検査を行います。
6.胆管がんの集学的治療
外科的切除が胆管がんを根治する唯一の方法ですが、必ずしもすべての方が切除のみで治るわけではありません。近年、化学療法や免疫療法の開発が進んでおり、切除とこれら切除以外の治療法を適切に組み合わせて“がんを治す“ことが求められます。
胆管がんの切除後は、エスワンという抗がん剤を6か月間内服いただき、再発を予防します。また、診断時に既に進行しており、そのまま切除しても再発の危険が高いものや、がんを完全に切除することが難しいと思われる場合は、手術前にゲムシタビン、シスプラチン、エスワンによる3剤併用の化学療法を行い、がんを縮小させてから切除することを検討します。
当科では切除不能であっても腫瘍が縮小し切除できるようになった患者さんを経験しております。諦めない治療をモットーに、胆管がんの根治を目指し日々の診療を行っています。
抗がん剤の内服を半年間行い、再発を予防します。
再発がないか、定期的に血液検査とCT検査を行います。